2025/6/10
6月10日に都内で「一般社団法人 知財・無形資産ガバナンス協会」の定時社員総会および設立記念式典を開き、菊地理事長により協会設立を宣言いたしました。
記念式典の会場には知財・無形資産に関わる会員約100人に加え、「知的財産立国」を目指し施策を展開する内閣府、経済産業省、特許庁、金融庁の担当幹部、国会議員にもお集まり頂き、様々な切り口からご挨拶を賜りました。
あわせて、①知財経営人材の育成、②オールジャパン体制による日本の未来図の創造、③日本の魅力を世界に届ける、という活動についてお話いたしました。
産経新聞様にも記事にしていただきましたので、あわせてご覧いただけると幸いです。
設立記念式典 開会/来賓のご挨拶
【開会の挨拶】当協会理事長 菊地 修
2025年6月10日に開催された一般社団法人 知財・無形資産ガバナンス協会の設立記念式典において、菊地理事長より開会の挨拶が行われた。冒頭、多くの関係者および来賓にご出席いただいたことへの感謝が述べられたうえで、当協会設立の背景として、戦後の奇跡的な復興を遂げた日本が、近年は「失われた30年」とも言われる経済低迷に直面していることを挙げた。諸外国が知的財産や無形資産を戦略的に活用し企業価値の向上を図ってきたのに対し、日本は活用が不十分であり、知財の経営活用が求められるとした。近年、政府によるコーポレートガバナンス改革が進展し、2021年のガバナンスコード改訂では「知的財産への投資拡大」が明記されたことに触れ、知財・無形資産を「経営の武器」として積極的に活用すべきタイミングに来ているとの認識を示した。そのうえで、当協会はこれまでの調査研究事業に加え、次の三つの事業に取り組む。その第一は、次世代の知財経営人財を育成する研修事業(現代の松下村塾)の創設、第二は、「株式会社日本」の成長ストーリーを構想する未来創造プロジェクトの始動、そして第三は、日本の現場力に基づく知財政策の提言や日本の魅力を世界へ発信する普及啓発活動を挙げ、「知財で日本を元気に」するための具体的な行動指針を示した。最後に、当協会の活動を前進させるためには会員および関係機関の協力が不可欠であるとして、協会の会員や関係者の皆様に対して、今後より一層の支援と参画をお願いするとともに、この協会の設立やその運営に尽力してくださった皆様に対して感謝を述べ、挨拶を締めくくった。
【来賓の挨拶】自由民主党 参議院議員 山田 太郎氏
山田氏は、協会の設立を心から祝意をもって迎えると述べ、自身が党の知的財産戦略調査会の事務局長として長年知財関連政策に携わってきた経緯を紹介した。特に著作権法や特許法の改正において、官庁と粘り強く議論を重ねてきた経験を踏まえ、知財の重要性を強調した。加えて、知財戦略2025の策定と閣議決定に触れ、政府与党としても知財を日本の成長戦略の柱とすべく積極的に取り組んでいることを示した。また、山田氏自身がかつて製造業向けコンサルティング会社を創業し、上場まで導いた民間経験を持つことから、現場の実務に即した視点で知財の課題や活用の可能性を熟知していると述べ、特に知財のビジネス化、収益化の重要性を強調した。さらに、政府としてはコンテンツ産業を自動車に次ぐ基幹産業と位置づけ、2033年までに輸出額20兆円を目指す方針を掲げていることに触れ、知財がもたらす経済効果の大きさを示した。特に知財は製品のように物理的な制約を受けず、無限の拡張性を持つ資産であることから、日本が次なる成長を遂げるための鍵であるとの認識を示し、協会の今後の活動に大いに期待を寄せた。
【来賓の挨拶】内閣府知的財産戦略推進事務局長 奈須野 太氏
奈須野氏はまず、協会の設立を心より祝福するとともに、知的財産や無形資産を巡る政策動向と今後の展望について言及した。特に、政府としては知財を単なる法的保護手段として捉えるのではなく、企業価値や国家経済に資する戦略資産として位置づけ、経営戦略や投資判断と連動するような形でのガバナンス強化を重視していると述べた。さらに、2025年版の「知的財産推進計画」では、IPトランスフォーメーションの概念を中核に据え、企業の知財活動を経営層の関与のもとで進化させる必要性を明示したと説明した。そのうえで、知財ガバナンスの実装を進めるためには、企業と政府、さらには金融機関や専門家が連携しながらエコシステムを形成していくことが不可欠であり、当協会がそうした実践の場となることに大いに期待していると述べた。特に、知財情報の見える化、人的資本との統合開示、ESG投資との接続性の確保などは政策的にも強く後押ししていく方針であるとし、今後も官民の協力により、知財を通じた日本経済の活性化に努めていく旨を表明し、協会の取り組みに対する継続的な支援を約束して挨拶を締めくくった。
【来賓の挨拶】特許庁長官 小野 洋太氏
小野氏は冒頭、協会の設立を心から祝福するとともに、知的財産の重要性が増す現代において、経営における知財・無形資産の戦略的活用が極めて重要であるとの認識を示した。特に、近年の技術革新の加速と国際競争の激化の中で、企業が持つ知財やブランド、人材などの無形資産が企業価値を大きく左右する時代に移行していることを指摘し、知財・無形資産を活用して経営の質を高めること、すなわち知財を活用して①差別化を図る、②協業を推進する、③経営革新を推進するといった「知財経営」を実践していくことが重要であると述べた。そのうえで、特許庁としても従来の権利付与・審査機関としての機能に加え、知財の活用支援や中小企業の知財マネジメント向上、人材育成など、より広範な政策的取り組みを進めていることを紹介した。そして今回設立された協会が、知財戦略と経営戦略の融合を実現する実践の場となることを期待すると述べ、今後の活動への強い期待と支援の意を表明して挨拶を締めくくった。
【来賓の挨拶】経産省 知的財産政策室長 中山 英子氏
中山氏は、協会の設立に対する祝意を述べるとともに、経済産業省としても知的財産を企業の持続的成長と中長期的な企業価値向上の源泉と捉え、その戦略的活用を強く推進していることを強調した。特に、近年は知財を「権利」として守るだけでなく、「資産」として活かす視点が求められており、企業が保有する特許や商標のみならず、ブランド、データ、人的資本などを含む無形資産全体を経営に組み込み、投資家や社会と対話していくことの重要性が高まっていると述べた。さらに、知財無形資産ガバナンスに関する支援、統合報告書への情報開示促進などにおいて、当協会の活動がその実践を牽引する重要な役割を担うことに大きな期待を寄せた。また、今後の政策形成においても、現場での知見や実践事例を基にしたフィードバックが不可欠であり、当協会の多様な関係者の知見が政策に反映されることを期待すると述べ、政府としても引き続き連携と支援を惜しまない姿勢を示して挨拶を締めくくった。
【来賓の挨拶】金融庁企画市場局企業開示課長 野崎 彰氏
野崎氏はまず協会の設立を祝福し、知的財産や無形資産が企業価値に占める比重が高まる中で、適切な情報開示とガバナンスの重要性が一層増していると述べた。近年、企業に求められる開示のあり方は大きく変化しており、財務情報に加えて人的資本、知財、サステナビリティといった非財務情報を含めた統合的な開示が投資家との対話の基盤となっていることを強調した。特に知財や無形資産については、企業の将来成長力や競争優位性を示す重要な指標であるにもかかわらず、定量的・定性的な情報開示が十分でないとの課題を指摘し、それゆえ企業自身による自発的で戦略的な開示の取組みを支援する必要があると述べた。また、金融庁としてもコーポレートガバナンス・コードや開示制度の整備を通じて、こうした動きを後押ししており、当協会がその実践を担う基盤として、企業と投資家の信頼構築を促進する役割を果たすことに大きな期待を寄せた。今後、開示の質を高め、知財・無形資産を企業価値創造の中核として位置づける取組みを加速するために、金融庁としても引き続き連携して取り組んでいく方針を表明し、協会の活動への支援の意を込めて挨拶を締めくくった。
【来賓の挨拶】発明推進協会会長 岩井 良行氏
岩井氏はまず、当協会の設立を心より祝福するとともに、知的財産や無形資産がこれまで以上に企業の競争力や価値創造に直結する重要な資源であるとの認識を示した。発明推進協会としても長年にわたり、企業や個人による発明活動の支援、知財制度の普及啓発、知財教育の推進などに取り組んできたが、近年はとくに知財を経営と結びつけて活用する視点の重要性が高まっており、当協会の設立はまさに時宜を得たものであると高く評価した。また、企業が知財や無形資産を単なる法的権利としてではなく、経営戦略の中核的資源として位置づけ、積極的に開示・活用していくためには、それを担う人材の育成と実践知の共有が欠かせず、その点で当協会が掲げる人材育成や情報発信の取組みに強く共感すると述べた。さらに、発明推進協会としても当協会との連携を深め、知財立国の実現に向けて互いに協力し合う意向を示し、知財の価値が社会や経済の中で正しく評価される環境の構築に向けて、今後とも積極的に貢献していく決意を述べて挨拶を締めくくった。
【来賓の挨拶】日本証券業協会副会長 岳野 万里夫氏
岳野氏は、協会の設立に対して心より祝意を表すとともに、新NISAや金融経済教育推進機構(JFLEC)の設立により動き出した貯蓄から投資の流れが本格化していこうとしている資本市場において、企業の知的財産や無形資産が企業の持続的成長や長期的な企業価値向上に果たす役割が飛躍的に高まっていることを強調した。とくに投資家との対話の中で、企業の知財・無形資産戦略やその実行体制、情報開示の内容が評価の重要な要素となってきており、これまで以上に透明性と戦略性のある開示が求められていると述べた。そのうえで、企業が持つ知財・無形資産の価値を的確に市場に伝えるためには、証券業界としても発行体企業と投資家の橋渡しを担う立場から、評価手法の高度化や情報開示の実務支援を進める必要があると指摘し、当協会の活動がその実践的な基盤を提供するものとして大きな意義を持つと評価した。また、金融・資本市場における信頼性確保の観点からも、知財・無形資産に関する体系的なガバナンスと説明責任の強化は不可欠であり、証券業協会としても知財ガバナンスに関する取り組みに積極的に関与していきたいとの意向を表明し、今後の協会の発展と継続的な連携への期待を込めて挨拶を締めくくった。
【来賓の挨拶】工業所有権情報・研修館(INPIT)理事長 渡辺 治氏
渡辺氏はまず、協会の設立に対して心からの祝意を述べた上で、INPITが知的財産に関する情報の提供とそのインフラ整備、人材育成を通じて、企業や大学の知財活用力の向上に取り組んできたことを紹介した。そして今後は、単なる知財制度の利用支援にとどまらず、知的財産や無形資産を経営戦略と結びつけて活用できる実践的な人材の育成と、そうした人材が活躍できる仕組みの整備が求められていると述べ、当協会の掲げる人材育成やガバナンス強化の方向性と深く共鳴することを強調した。特に、企業の競争優位性や中長期的価値を支える源泉が有形資産から無形資産にシフトする中で、それを正しく把握し、適切に評価・発信する力が社会的にも重要視されており、INPITとしても引き続き多様な支援を提供していくとした。また、官民連携による知財人材の裾野拡大と知財経営の定着に向けて、当協会が果たすべき役割は非常に大きく、INPITとしても当協会との連携を通じて、日本全体の知財リテラシー向上と産業競争力強化に貢献していく所存であると述べ、挨拶を締めくくった。
【来賓の挨拶】日本弁理士会会長 北村 修一郎氏
北村氏は冒頭、協会の設立を心より祝福するとともに、知的財産が企業の価値創造の根幹をなす現代において、当協会の設立が持つ意義の大きさを強調した。特に、従来の「取得・権利化」中心の知財活動から、「活用・開示・対話」へと重心が移る中で、弁理士の役割も変化しており、企業経営に貢献できる新たな知財専門人材の在り方が問われていると述べた。そのうえで、日本弁理士会としても知財を経営資源として活かすための提案力やコミュニケーション力を持つ弁理士の育成に力を入れており、当協会の活動と連携しながら、実務に即した支援と人材育成を進めていきたいとの意向を表明した。また、知財・無形資産ガバナンスの実装には、制度設計、戦略構築、実務運用の三位一体の取り組みが不可欠であり、弁理士がその橋渡しを担う立場として社会に貢献できる余地は大きいとし、会員の一人ひとりが「知財で日本を元気にする」という協会の理念に共鳴し、積極的に活動へ参画していくことを期待していると述べ、今後の協会の発展と連携への期待を込めて挨拶を締めくくった。
【設立記念講演】Alphaterra Advisory株式会社/三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 アドバイザー 松島 憲之氏
松島氏はまず、知財・無形資産が企業価値創造の中心的要素として急速に注目を集めている背景に触れたうえで、現代の経済・市場環境における変化の要因として、グローバル経済の構造転換、生成AIの急速な普及、インフレ下における価格戦略の再構築、さらにはアクティビスト投資家の台頭によるガバナンス意識の高まりを挙げた。こうした変化に対応するには、企業が保有する知的財産やブランド、人材、ノウハウといった無形資産を可視化し、それらを企業戦略として体系的に説明する力が不可欠であると強調した。さらに、知財・無形資産の情報は企業の未来を語る重要な手段であり、それを通じた投資家との対話強化が、今後の企業経営における成否を分けるポイントになると指摘した。また、講演の中では、知財戦略を単なる法務・技術の枠を超えて「経営の武器」として位置付けるべきであり、経営層自らがその意義を理解し、実践に移す必要があると訴えた。今後は知財・無形資産を活用したインフレ対応、価格転嫁力の向上、差別化の明確化といった観点から、知財戦略の社会的・経済的インパクトを明確に示すことが求められるとし、最後に当協会がその先導役となり、企業や専門家、政策当局、金融機関が連携しながら日本全体の知財ガバナンスレベルを高めていくことへの期待を表明し、講演を締めくくった。
【開会の挨拶】当協会副理事長 引地 進
2025年6月10日に開催された一般社団法人 知財・無形資産ガバナンス協会の設立記念式典において、閉会の挨拶として引地副理事長より発言が行われた。引地副理事長は、式典の運営にご協力いただいたすべての関係者と、多忙な中で来場・オンライン参加された出席者に対して深い感謝の意を表するとともに、当協会の設立にあたり示された多くの期待と励ましの声に対し、身の引き締まる思いであると述べた。また、当協会が目指す「知財で日本を元気にする」というビジョンの実現に向けて、今後は人材育成、政策提言、情報発信といった具体的な取り組みを着実に推進していく決意を示し、企業、大学、政府関係機関、専門家など多様なステークホルダーとの連携を強化しながら、実効性のある知財・無形資産ガバナンスの確立に向けて尽力していく姿勢を明らかにした。最後に、本日の記念式典を新たな出発点として、会員をはじめとする関係各位の継続的なご支援とご協力を重ねてお願いし、今後の協会活動の発展と参加者各位のご活躍を祈念して、閉会の言葉とした。
当日の様子

©一般社団法人 知財・無形資産ガバナンス協会